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2015年01月05日

焼き鳥が無くなると

 次に、肉を竹棒から抜いてくれたのだが、俺は待ちきれずに生まれて初めてお婆さんの膝の上に乗ってしまった。とは言え、緊張のあまりに俺は無意識に爪を立てて踏ん張った。
   「痛いっ、わたしはお前に悪戯をしないから、爪を引っ込めておくれ」
 またも、こんなに優しいお婆さんに傷を負わせてしまったと後悔して、もう二度とお婆さんを噛んだり爪を立てたりしないぞと思ったのだが、その後も時々やらかしてしまった。
   「やはり、俺は半野良の血が通っているのだ」

 焼き鳥が無くなると、俺はスゴスゴと縁の下に引揚げて、もう餌は貰えないかも知れないと思いながらしょんぼりと、いつもの寝場所に蹲って昼寝をしてしまった。

 夕方、俺はお婆さんの声で目を覚ました。
   「ケースケ、ケースケ、出ておいで、餌の時間だよ」
 ケースケって何だろう、俺を呼ぶ時は「来い来い来い」とか、「にいにいにい」とか呼んでいたのに、新入りの猫が来たのかなと、俺はちょっと縄張り意識を燃やした。だが、それは違っていた。お婆さんは俺を呼んでいたのだ。これはずっと後にわかったことだが、ケースケとはお婆さんの死んだ息子の名前だったのを俺の名前にしたらしい。
   「今まで縁の下から滅多に出てこなかったから、名前なんか要らなかったのだけど、お前もわたしの膝に乗ってくれたのだから、もう半野良じゃない」
 お婆さんの手を噛んだり、膝に爪を立てたりしたのに、お婆さんはちっとも怒ってはいない。俺は、益々お婆さんが好きになってしまった。
一に殘花
囈語千年
神秘の花園
咫尺天涯
それでは靑
悲しみの花
かつての時間
小橋流水
悠々と揺れる
玉のような宝  


Posted by 寂しい夜 at 13:18Comments(0)生活日誌